とある会社に勤務する青年はこの日もあくせくと働いていた。一見普通の職場のようだが、全然普通ではなかった。

なぜなら・・・

「貴様!なんなんだこの雑な出来は?てめえみてえな出来損ないは今にでもぶっ殺してやるよ!!」
部下を罵倒する上司、そう、ここはブラック企業だったのだ。

(また始まったよパワハラが・・・)
上司に罵倒される同僚を見た彼は自分もまたやられないか内心怯えていた。

そんなある日、彼はふとした拍子にミスをしてしまった。それを見た上司は怒り心頭で詰め寄ってきた。
「トム、何初歩的なミスしてんだ!生きる価値のない貴様なんか生きてるだけでも迷惑なんだよ!!」
上司はトムに殴る蹴るの暴行を加えながら激しく罵倒した。

(もうやめてくれ・・・部下を人扱いしないで何が上司なんだ!)
ついに我慢の限界に達したトムは起き上がると自分をいじめた上司に立ち向かった。

「いい加減にしろよ!部下のことを奴隷のように扱いやがって・・・てめえがくたばりゃいい話だろうがああああああっ!!!!!」
怒りを爆発させたトムは上司につかみかかるが、返り討ちに会い突き飛ばされてしまう。

「上司に逆らうやつはこれで殺してやる!!」
上司はトムに銃口を突きつけた。さすがの身の危険を感じたトムは会社を飛び出しどこかへ逃げ出した。

一方街では今日もサニーは悪党を成敗していた。一仕事終えた彼女はその場を移動すると一人の青年が倒れているのを見た。
サニーは彼に呼びかけるとすぐに気が付いた。

「いったい何があったの?」
彼はサニーに事情を打ち明けた。

「俺はさっきまで会社にいたんだけどすごくブラックで過剰な長時間労働やパワハラは当たり前なんだ。俺含めた平社員は社長含む全ての上司に暴言を浴びせられたり酷い時には殴られたり蹴られたりすることも日常茶飯事で辞職も許されないし、しかも定年ないから一生酷い仕打ちに耐えなければならないんだよ。俺はさっき上司から暴行を受けながら罵倒されたとき我慢できなくなって歯向かったら銃を突き付けて殺すと脅されたからここまで逃げてきたんだ。そうしたら疲れてぼーっとしていたんだよ。」

彼は事情をサニーに話した。話を聞いたサニーは彼を優しく抱きしめると彼はみるみると安らかになった。
「それは辛かったのね。でも私が一緒ならもう苦しまなくていいわよ。」
サニーの胸の中で彼は安心しきった表情を浮かべていた。

そんな中一人の中年男性が二人の前に現れた。
「トム、やっぱりここにいたのか!?」
声がしたほうを振り返るとトムは表情が真っ青になった。

「社長、なぜここがわかったんですか?」
「知ってるも何も逃げてもすぐ見つかるようにGPS付けとりゃすぐわかるだろ!」
トムは背中を触るとGPSがくっついてることに気づき、愕然とした。

「お前は上司に逆らった挙句に会社から逃げたんだ。今すぐここでくたばってもらうよ!」
社長はトムを殺そうと銃を突きつけた。すると社長はサニーに殴り飛ばされた。

「話はすべて聞いたわ。社員を人ではなく奴隷扱いするなんて人としてどうかしてるわよ!!」
サニーは社長に詰め寄った。

「どうかしてるのはてめえのほうだ!俺は利益さえ上がればそれでいいし使えない奴はとことん扱いてやってんだよ。それの何がおかしいんだ?」
社長は自分の非を認めるどころか正当性を主張した。全く悪びれない社長にサニーは真っ向から反論した。

「じゃあ聞くけど上司のパワハラに苦しめられてる部下の気持ち考えたことあるの?」
「そんなの知るか!利益がすべてである以上できない奴は大人しく殺されりゃいいんだよ!!」
社長はそう言うとサニーに襲い掛かるが、返り討ちにあった。すると今度は刃物を取り出して刺そうとするが、再び返り討ちにあって倒れるとはずみで宙を舞った刃物が社長の体に刺さった。

その後、会社では地下室に社長が上層部と共犯で殺害した平社員のコンクリ詰めにされた遺体が見つかり、上層部の社員はパワハラを告発したことから口封じで殺害し、表向きには行方不明になったと説明していたことを供述した。また、一連の過剰な長時間労働やパワハラでうつ病を発症したり自殺に追い込まれた社員がいたことが明るみになったことで取引先からの信用を失い経営は悪化。会社は倒産したという。

一方トムは善良な企業に再就職すべくハローワークに通っては求人を探した。やがて無事に再就職できたかどうかは誰も知らない。

終わり

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